「体外衝撃波」で結石を砕く

身体の中に結石ができると強い痛みを伴うことがあります。手術や内視鏡治療と異なり、外来でも可能な「体外衝撃波結石破砕術(ESWL)という治療法があります。体の外側から衝撃波を与えて石を砕く画期的な治療法です。

膵臓にも結石はできる

 膵臓に結石ができることを「膵石症」といい、慢性膵炎に合併する病気の一つです。慢性膵炎とは、何らかの原因で膵臓に持続的な炎症が起こる病気です。持続的な炎症が起こった膵臓に線維化*¹という反応が起こり、膵臓が徐々に硬くなっていきます。硬くなった膵臓の中の膵管(膵液という消化酵素の流れ道)は部分的に硬く狭くなり、膵液の流れが滞ります。滞った膵液中のタンパク質が固まり結石を形成します。結石が膵液の流れを遮り、さらに慢性膵炎の状況を悪化させるため治療が必要となります。

*¹線維化・・・線維組織が増殖し、組織が線維成分に置き換わり硬くなってしまうこと。

慢性膵炎と膵石症の症状

 二つの症状は似ており、膵臓自体の炎症、さらには滞った膵液による自己消化(強力な消化酵素である膵液が膵臓自身を消化・破壊すること)により、みぞおちや背中に痛みが生じます。膵臓の周りは神経が多いため、激痛を感じ救急搬送されるケースもあります。また、膵液には強い消化機能があるため、この機能が働かないと消化・吸収不良を起こし、下痢・体重減少などが見られます。さらに、膵臓には血糖値を調節する働きもあるため、これが障害されると糖尿病を発症します。

男性に多い病気

 慢性膵炎の原因は70%がアルコール、残りは遺伝や特発性(原因が分からないこと)など、胆石が関連することもあります。従って、飲酒率の高い男性が多く発症し、特に40~50歳代に多い病気です。

衝撃波で石を砕く

 膵石症の治療には、外科的治療、内視鏡的治療が主に行われますが、その他に体外から衝撃波を当て石を砕く「体外衝撃波結石破砕術(ESWL)という治療法があります。尿管結石に対し広く行われている治療で、文字通り体外(お腹や背中)から専用の機械で衝撃波を当て、結石を砕きます。ただし、1回で破砕できることは稀で、多い人で数十回の治療を行う場合もあるため、根気のいる治療法です。完全に破砕できなくても、5㎜以下まで小さくなれば内視鏡で除去することもあります。
 体外衝撃波結石破砕術(ESWL)は1回の治療の効果は小さく、時間も要しますが、手術や内視鏡治療に比べ、合併症のリスクが比較的低く、外来でも行えるため(ただし、当院では初回導入時は入院で行っています)患者さんの生活への影響が少ないことがメリットです。


まずは生活習慣を見直そう

 慢性膵炎・膵石症の原因の多くは、アルコールにあります。いかなる治療よりも重要なのは断酒です。飲酒をやめ、原因を断ち切ることで膵臓へのダメージを最小限にすることが出来ます。
 また、糖尿病や高コレステロール血症とも関連しているため、ご自身の生活習慣を見直すことから始めましょう。