おねしょについて

日中のおむつは卒業したものの、夜間のおねしょが続く子どもは少なくありません。
劣等感を抱えて精神的な発育に影響を及ぼす可能性があります。
そこで、小児腎臓専門医の岩城拓磨先生にお話を伺いました。



おねしょの原因は一般的に二つ


5歳になっても月に1回以上のおねしょが3ヶ月以上続くことを医学的に夜尿症(やにょうしょう)と言います。

原因➀ 膀胱容量が小さく、夜中に作られた尿を十分に膀胱内に留めることができない
(膀胱容量低下型夜尿症)
原因➁ 夜中に作られる尿量が多く、膀胱容量をオーバーしてしまう
(夜間多尿型夜尿症)

両方が原因になっている子どもも沢山おり、その場合おねしょがほぼ毎日という子が多くみまれます。
あとに示しますが、特殊な原因として「便秘」や「生まれつきの腎臓病」などで治りにくいこともあります。

生活習慣の改善

塩分や糖分は喉を渇かせる作用や利尿作用があるので、夕食時の塩分摂取や夕食後のアイスクリームやフルーツの摂取を控えることが大事です。夕食後の水分摂取は200ml程度にし、寝る前に必ずトイレに行くようにしましょう。便秘は腸に溜まった便が膀胱を圧迫することにより、膀胱容量が低下しておねしょの原因となります。朝食後に便を出す習慣をつけましょう。

膀胱容量低下型夜尿症に対する治療「アラーム療法」

水分を感知する特殊なパッドを下着と一緒に履いて、感知した情報が無線で別の器械に飛び、アラームが鳴ります。アラームが鳴ったことを確認し、子どもを起こしてトイレに連れて行き、残尿があれば出す治療法です。一晩で何回もすると寝られないので一晩一回だけ行います。治療開始直後は当然毎日のようにアラームが鳴りますが、だんだんアラームが鳴らなくなり、朝までおねしょをしなくなります。なぜおねしょが治るかは分かっていませんが、膀胱容量が大きくなり治ると考えられています。抗コリン薬という膀胱の緊張を緩めて、膀胱内に尿が溜まりやすくする薬もありますが、この薬単独で完治することは少なく、他の治療に補助的に使用することがほとんどです。

夜間多尿型夜尿症の治療「抗利尿ホルモンの内服」

尿の生成を抑える「抗利尿ホルモン薬」を飲むことで、夜中に作られる尿を減らすことが期待できます。子どもも大人もみんな睡眠中に多く分泌されているホルモンを少し補充する治療のため、用法を守れば身体に大きな負担は掛かりません(ただし、用法や副作用に関しては小児科医に十分説明を受ける必要があります)。
効果がみられたら3ヶ月程度継続して服用後、中止しますが再燃することは少ないです。夜間多尿型夜尿症に対してもアラーム療法で改善する場合もあるため、アラーム療法から開始することも多いです。

長引く場合は他の疾患の可能性

生まれつき腎臓が小さいなどの尿路奇形があるとおねしょが治りにくくなります。また非常に稀ですが、糖尿病や尿崩症といった水分をたくさん飲んで、尿をたくさん出すといった病気が隠れていることがあります。例えると水分を1日に3ℓ以上飲んで、尿も3ℓ以上出るような状態です。これらは腎臓の超音波検査や検尿によって見つけることができます。これらの病気の場合はおねしょの治療ではなく、それぞれの病気に対する治療が必要になります。意外に思われるかもしれませんが便秘も夜尿の原因となります。便秘が明らかな場合は便を出しやすくなる薬を使うこともあります。

怒らないことが大切

夜尿症は睡眠中に無意識におねしょをしてしまう病気です。本人の気持ちの頑張りで治すことができないため、怒られた時の気持ちのショックは計り知れず自尊心が大きく傷つけられます。決して怒らず、おねしょをしなかった時は褒めてあげてください。また夜尿症の子どもはおねしょが治らないために、普段の生活やクラブ活動で消極的になってしまう傾向があります。早期に治療することが有効なため、お困りの方は小児科の受診をおすすめします。